CBSソニーが製作していたmaster soundシリーズについて考察してみたいと思います。通常盤より少しお高いし、当時新しい技術ばかりと思えたので、どれも普通よりは良いのだろうと思い込んでいましたが、規格により特色があり一概にメリットばかりとは言えないようです。まずはメーカーのDMから master sound の規格について抜粋してみました。
● マスターサウンドは録音方式およびレコード回転数で以下のような種類があります。
米CBSで半速カッティングのメタル原盤直輸入。
(ハーフスピードマスタリング)
マスターテープとカッティングモーターのスピードをそれぞれ半分にして、二倍の時間をかけて丁寧にカッティングされているので、高域の周波数レンジが広がり、レベルも高くなり繊細な溝もシャープに切れる特長があります。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
ハーフスピード・マスタリング | アナログ | 米メタル原盤直輸入 日本でプレス製造 | 33 1/3 rpm |
デジタル・マスターテープでカッティング。
(デジタル・マスタリング)
アナログオリジナルテープから優秀なものを選らび、直接デジタル方式でカッティング・マスターテープを作成し、カッティングに使用します。アナログ方式のカッティング・マスターを使用した場合に比べ雑音や歪の少ない、澄んだ音が得られます。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
デジタル・マスタリング | アナログ | デジタル プロフェッショナルPCMテープ | 33 1/3 rpm |
デジタル・マスタリングの高音質45回転LP
45rpm 高音質45回転LP。
45回転LPは、通常の33 1/3回転LPに比べ、同一半径における線速度が1.35倍になります。その結果、トレーシング歪は第2高調波で1/1.8つまり約半分にまで減少します。また、高域限界周波数は1.8倍となり、33 1/3回転で10KHzまで再生できる内周の1点では18KHzまで再生できるので高域のよく伸びた、クリアーな音を再現できます。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
デジタル・マスタリング45 | アナログ | デジタル プロフェッショナルPCMテープ | 45rpm |
コンピューター符号で生そのまま録音再生
(デジタルレコーディング)この新録音方式は、従来のように信号を直接記録する方式とは根本的に異なり、信号をいったんコンピューター等で使うデジタル符号に置き換えて、記録、再生します。このため、録音段階での悪影響は驚くほど改善され、ダイナミックレンジは16ビットの信号で90dB以上と、通常のアナログより20dB(約10倍)以上も広く、すばらしい迫力を持つ、雑音の少ないクリアーな音が再現されます。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
デジタル・レコーディング | デジタル | デジタル プロフェッショナルPCMテープ | 33 1/3 rpm |
デジタルレコーディングの 高音質45回転LP。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
デジタル・レコーディング45 | デジタル | デジタル プロフェッショナルPCMテープ | 45 rpm |
演奏を、その瞬間にカッティング。
(ダイレクト・ディスク)
演奏しているその瞬間に、ミキシング・コンソールでバランスをとり直接ラッカー盤にカッティングする、ダイレクト・マスタリング方式で製造されます。一般のレコードと異なって録音機を通さないので、録音技術で生じるあらゆる悪影響から解放され、生々しい、迫力のある音がレコードに刻まれています。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
ダイレクト・ディスク | 33 1/3 rpm |
ダイレクト・ディスクの 高音質45回転LP。
規格 | 録音方式 | カッティング・マスター | レコード回転数 |
ダイレクト・ディスク | 45 rpm |
以上は、左写真のDMより抜粋しています。今となってはやや疑問の残る記述も見られますが、パンフレットに記載してあるひのままの文章で転載してあります。
なおこの時点では、CBS/SONY INC.とEPIC/SONY INC. の併記になっています。
これ以前のパンフレットの中には更にマスター・サウンドW76、 スター・サウンドW76 45、 の2種類が見られます。以下は別のDMからそれらに関連する記述を抜粋してみます。
W76
スイス・スチューダー社に特注した、1/2インチ幅、2トラック、76cm/secスピードの、日本のレコード界ではユニークな、テープレコーダーを使用しています。通常のマスターテープに比べて、トラック幅が2倍なので、単位時間に記録再生ヘッドを通る面積は実に4倍となっています。それだけで、豊かで正確な情報量を持ち、雑音も減少します。特に高音域では大幅に改善され、ダイナミックレンジも2倍以上となります。過渡特性に大変優れ、粒立ちの良いクリアーな音を再生します。
規格 | 録音方式 | カッティングマスター 速度 | カッティングマスター テープ巾 | レコード回転数 |
マスター・サウンド W76 | アナログ | 76cm/sec | 1/2インチ | 33 1/3rpm |
W76カッティングマスターを使用した 高音質45回転LP。
規格 | 録音方式 | カッティングマスター 速度 | カッティングマスター テープ巾 | レコード回転数 |
マスター・サウンド W76 45 | アナログ | 76cm/sec | 1/2インチ | 45rpm |
追加分は左のDMより抜粋しています。多分こちらは初期の頃の解説ではないかと思われるわけですが、先のDMより抜粋した内容がより詳しく書かれているものです。
次は使用されていた機器の解説を抜き出してみました。