master sound / CBS SONY

Radio & Record

● クリスタル・ロック・マスタリングシステム ・ CRYSTAL LOCK MASTERING SYSTEM
 このマスター・サウンド・シリーズのカッティング・システムに、ブラシ・アンド・スロットレス・モーターを高精度水晶発振で制御する、新開発の超高性能ダイレクト・ドライブ方式カッティングモーターを採用。これによって、ダイナミック・ワウを著しく減少させることに成功、瞬間的な衝撃音や最強音にも回転ムラが発生することなく、音の粒立ちがよくなり濁りも減少。さらに、中低域の音が豊かにひろがり、芯のしっかりした音像低位が得られます。
とあります。更に技術解説を続けますと、
 従来のカッティング用ターンテーブルは、モーターから発生する振動および回転ムラを軽減するために、オイルカップラーやコイルバネをモーターとターンテーブルの間に入れなければならず、カッティング針の振幅や切り込みの深さの変化にともなう負荷の増減に対しては、ターンテーブルの慣性質量によるためDynamic Wow(動的ワウ・フラッタ※注1)の発生を防ぎきれませんでした。
 当社は、このDynamic Wowの低減を図るため、ソニー株式会社の超高性能クリスタル・ロック・ダイレクト・ドライブ方式ターンテーブルの優秀性に着目し、技術研究所にレコードのカッティング時の負荷変動による回転ムラを極限まで減少させるターンテーブルの設計製作を依頼した結果、最大トルク25kg/cmの強力な超高性能クリスタル・ロック・ダイレクト・ドライブ方式のカッティング専用モーターが完成し、Dynamic Wowを極限まで減少させました。
 Dynamic Wow Test のピアノ音楽(16bit PCM録音による)をカッティングした結果は、従来のカッティングマシンでは最大0.21%RMS(0.03%WRMS※注2.)のDynamic Wowが発生するのに対し、新開発のカッティング専用モーター採用のカッティングマシンでは0.015%RMSという、驚異的な数値を達成しました。
 新開発の”Crystal Lock Mastering System”の採用によりDynamic Wowが1桁以上改善され下記の特性が飛躍的に向上しました。

  1. 音楽の強弱にともなう音のフラツキがなくなる、より安定感が得られる。 
  2. 音の粒立ちが良くなる。 
  3. 音の濁りが大幅に減少する。 
  4. 音像定位の向上。 
  5. 中低域の音が豊かに響く
    など、大きな特長をもっています。

1※ 注1. Dynamic Wow(動的ワウ・フラッタ)
Static Wow (静的ワウ・フラッタ)は3kHzの信号の定振幅でカッティングし、再生して測定しますが、ターンテーブルの負荷変動は無い状態です。実際のカッティング状態では、記録密度を上げる目的からバリアブルピッチ、バリアブルデプス方式による負荷変動と、楽音による溝振幅の変化による負荷変動により、ターンテーブルは大きな負荷変動を受けます。この負荷変動のある状態で測定したものがDynamic Wow(動的ワウ・フラッタ)です。
2.※ 注2. RMS(Root Mean Square)
実効値のことです。WRMS(Weighted Root Mean Square)聴感補正した実効値のことです。

● 76cm/sec. マスター・テープ ・ 76cm/sec.MASTER TAPE
 このシリーズには、通常より2倍の76cm/sec. ハイ・スピードのマスター・テープを採用。しかも、このテープは直接カッティングに使用しますので、S/N比は約6dB、飽和レベルは3dB、ダイナミックレンジは約9dB改善、周波数特性も大幅に改良されました。その上、テープとヘッドの相対速度が2倍になるため、ワウ・フラッターの改善は勿論のこと、過渡特性が向上し衝撃音のような瞬間的に変化する音に強く、粒立ちの良いクリアな音が楽しめます。さらにW76には通常の2倍の1/2インチ幅のマスター・テープを2トラックで使用。S/N比、ダイナミック・レンジの改善、ドロップ・アウトの減少など安定性の向上を計りました。
(以下は技術解説です。)
38cm/sと76cm/sでは、録音イコライザーの、時定数が異なります。

テープ速度 低域時定数 高域時定数
38cm/sec. 3180μsec. 50μsec.
76cm/sec. ∞ 17.5μsec.
38cm/sの規格は、20年程前※注3. に当時のテープ性能を前提として決められたものです。76cm/sの規格は大幅に向上したテープの高域特性を生かしてS/Nを改善する目的で、数年前にテープレコーダー・メーカーが打ち合わせて決めたものです。
 このイコライザー特性の変更により、7kHzで4dB、10kHzで6dB、15kHzで7dBノイズレベルが低下しています。又、このシリーズのマスター・テープは録音レベルを通常より約3dB高くしていますから、通常の38cm/sマスターと比較して10kHzで約9dBノイズレベルが低いことになります。
1/2インチ 2 CHANNELは、ワイドなトラック幅で3.5dBノイズがよくなっていますから、トータル10kHzで12.5dBもの改善がなされているわけです。

●1/2インチ 2 CHANNEL TAPE RECORDER
 磁気テープのノイズは、録音トラックの幅が広いほど小さくなります。1/2インチ 2 CHANNELのトラック幅は、通常の1/4インチ 2 CHANNELの2.25倍の4.9mmでS/Nは3.5dB改善されます。又、トラック幅が広い方がテープ上のゴミ、ヌリムラ等によるレベル変動も少なくなり、安定感のある音質が得られます。テープレコーダーは、STUDER社にカッティング用も含めて特注したものです。
 S/N改善量=10 log(録音トラック幅の比)=10 log2.25=3.52(dB)


 ※注3. この解説が作られたのは記事の内容からみて1978年頃と推測されるので、その20年前1960年前後ではないだろうか?

● ダイレクト・プレイティング・タイプIIメッキ方式
 DIRECT PLATING TYOEII
このシリーズは、従来のラッカー盤に銀メッキ処理をする方式をとらず、直接メッキする新方式ダイレクト・プレイティング・タイプIIを導入。メッキ液の改良、液温制御、電着ストレスの低減などを改善し、音に磨きがかかりました。またこの方式によって、従来の銀メッキ、メタル・マスターの表面に比べて凹凸がなくなりより滑らかな表面になります。その結果、音の曇りを鮮やかに消し去って、繊細な音溝の変化を忠実に再現することができます。

● 45回転30cmステレオLP・45rpm RECORD
45回転LPは33 1/3回転LPに比較して、速度が同一径で1.35倍。その結果、トレーシング歪みは第2高調波で1/1.8、第3高調波では1/3.3減少して、より濃い音楽が楽しめます。さらに、カッティングしうる周波数の高域限界は1.8倍となって、高音域の再生帯域が拡大します。つまり、33 1/3回転の内周で10kHzまで再生出来る場合、18kHzまで再生が可能となり高域のピュアでノビのある音が楽しめます。
(一部の商品は33 1/3回転です。)

45回転LPは、33 1/3回転LPと比較したとき、同一半径の位置では線速度が1.35倍速くなり、各種の特性が向上します。
垂直トレーシング歪み    第2高調波   1/1.8
              第3高調波   1/3.3
水平トレーシング歪み    第3高調波   1/3.3
又、再生針の針先球面半径と音みぞの変調曲率半径が一致する周波数(再生限界)は1.8倍高くなります。例えば33 1/3回転LPの内周で、10kHまで再生出来るカートリッジの場合18kHzまで上限がひろがります。しかし、必然的に収録時間は短くなり、33 1/3回転LPの74%になってしまいます。そのうえ70%より長いソースの場合はそれより内径での線速度は逆におちてしまい、メリットが少なくなります。このため特に良い特性を要求されるレコード以外に45回転が採用されないわけです。


● SUPERB PROFILE スパーブ・プロフィール 厚く重い新形状。
最高の音質を追求するマスター・サウンドならではの新しいレコード形状です。グルーブガードのテーパーをほとんどなくして、盤面保護の限界まで音溝部分の厚みを増しました。ターンテーブルへの密着性も著しく向上し、重量感のある強靱で安定したこのレコードからは、芯のある中低音が、豊かに空間いっぱいに広がります。

その他にもラッカー盤のメッキ方法やメタルマスターのメッキ方法などや、レコードの素材自体にもに特徴があるようですが、割愛しました。

次は実際のレコード紹介を少し